ここ近年、駅伝では國學院大學が注目度が大きくなってきました。2018年の出雲駅伝では初優勝し、その年から全日本大学駅伝での上位入賞とシード権連続獲得。さらには、箱根駅伝では「往路優勝 総合3位」を掲げ、2022年は往路2位 総合3位と、いつ目標達成してもおかしくないようになってきました。
駒澤大学 大八木監督の愛弟子でもある前田康弘監督が率いる國學院大學陸上競技部について、前田監督、選手などの名言、名ゼリフをご紹介します。
ひとりの小さな一歩がチームの大きな一歩へ
ひとりの小さな一歩がチームの大きな一歩へ
テレビ中継で國學院大學のランナーや前田康弘監督の画面になるとレポーターから必ずと言っていいほど紹介されるフレーズです。
前田監督がコーチ、監督代行、監督に就任した頃の國學院大學は、予選会を通過するかどうかで、常連校ではありませんでした。
なんとか常連校に押し上げるには、「歴史を変える」しかないと、前田監督は考えていました。きつい局面や困難にぶつかったとき、ほんとうに力になる言葉は、ホンネでしかない。その気持ちからミーティングでは「建前から来る言葉なんていらない」と選手達に訴えかけます。
そうして生まれたのがチームスローガンとなった『歴史を変える挑戦』。さらに選手達と意見を出し合って『ひとりの小さな一歩がチームの大きな一歩へ』が生まれました。
こうして『歴史を変える挑戦~ひとりの小さな一歩がチームの大きな一歩へ~』のパワーフレーズが選手一丸となって2018~2019年の駅伝シーズンの出雲駅伝、全日本大学駅伝、箱根駅伝を戦っていきました。
このパワーフレーズで選手が一丸となって闘った結果、國學院大學は、
・全日本大学駅伝 6位 (初のシード権獲得)
・箱根駅伝 往路 3位 総合 7位
と、これまでの國學院大學史上の快挙を成し遂げました。
そして、続く2019~2020年は前年の快挙がフロックだとは言わせまいと、メインテーマはそのままに『歴史を変える挑戦–強さを証明し、さらなる高みへ–』で、シーズンをスタートさせました。
その結果、
・出雲駅伝 1位
・全日本大学駅伝 7位(2年連続シード権獲得)
・箱根駅伝 往路 2位 総合 3位
ひとりひとりの小さな一歩が、こうしてチームにまとまると、大きな成果に繋がることを選手達が教えくれました。
そして、その成果がホンモノだと言うことを翌年には出雲駅伝の優勝、全日本大学駅伝の2年連続シード権獲得、さらには、箱根駅伝で往路で2位、総合では3位で示しました。これまでの努力が実ったと言っても過言でないですね。
國學院大學の勝負飯
前田監督も、どういうきっかけで、いつから始まったのか覚えていないという國學院大學選手がレース前日に食べる勝負飯。
この勝負飯のために、レース前日、この勝負飯の店が近くにあることを条件に宿泊するホテルを決めると言います。
その勝負飯は「すき家の牛丼」
2019年の箱根駅伝では、1区 藤木選手、2区 土方選手、そして前田監督がスタート近くの大手町に宿泊し、3人がすき家で夕食を摂りました。
土方選手 … 高菜明太マヨ牛丼 の大盛り
藤木選手 … とろ~り3種のチーズ丼 の大盛り
レースの前日に摂る食事として栄養学的にどうかは分かりませんが、やはり若い学生の食欲はすごいにつきます。
ちなみに、レース2日目に箱根芦ノ湖からスタートする6区の選手には、芦ノ湖近辺にすき家がないため、小田原の店からテイクアウトしてホテルで食べるそうです。
ぜったいに欠かせない勝負飯なんですね!
4番バッターばかりは必要ない
前田監督は、箱根駅伝には3つのステージがあると言います。
・第一ステージ–予選会
・第二ステージ–本戦往路
・第三ステージ–本戦復路
予選会では、本戦出場をかけた大事なレースになります。長い距離を爆発力よりも長距離のなかで力を発揮できる選手が望まれます。
箱根駅伝本戦の往路では、各チーム主力級の選手をエントリーしますので、スピード型の選手が必要になります。前田監督は、1500mや800mで力を持っている選手にまで目を向けます。
そして箱根駅伝本戦の復路では、前が見えないような一人旅になっても、十分に日頃の実力を発揮できる選手が最適です。
前田監督は、予選会から本戦を目指していた頃は、このような視点で選手のスカウト、エントリーをしていました。
つまり、予選会だけでなく、予選会を突破してからの往路にふさわしい選手、復路に最適な選手を揃えていなければならず、ホームランバッターのような選手だけでは箱根駅伝を征服できないのです。
選手にはいろいろな特徴を持っています。
・スピードに優れている
・ロードで活躍できそうなスタミナ型
・スピードに優れている
このようにそれぞれの特徴を活かせる区間を割り振りしてきます。
それぞれの区間エントリーをどの選手にするか、エントリー締め切りまで悩み尽くすのもうなずけます。
欲しいのは”飢えている選手”
前田監督が高校生ランナーのスカウトで重視しているのは
・ハングリー精神や闘争心が感じられる学生
・闘争心を剥き出しにして走るファイター型の学生
前田監督ご自身がエリートランナーではなく泥臭い競技生活からのし上がってきた経験から、なんとしてでも箱根を走りたい!いい結果を出せるようにがむしゃらにがんばる!そんな選手を期待するのでしょう。
闘争心をむき出しにして走る選手について、前田監督は他校では二人が目にとまっています。
・東京国際大学 伊藤達彦選手
・東海大学 舘澤亮次選手
東京国際大学 伊藤達彦選手は2020年箱根駅伝第2区で、東洋大の相澤晃選手に追いつかれてからは長い距離、死に物狂いで付いていった光景が印象的でした。この二人の併走は相澤選手のラストスパートで振り切られて中継点では話されましたが、遅れまいとする伊藤達彦選手の表情、走りは素晴らしいものでした。
また、東海大学 舘澤亮次選手は同じ年の箱根駅伝第6区を走り、極限まで自分を追い込み、そこからの踏ん張りが驚異的でした。
チームのことをしっかり考えることができるからこそ、あそこまで力を絞り出せるのだろう。敵ながら、すごいなと思える選手はなかなかいないが、この2人は本当に素晴らしいと思った。
前田監督はお二人をこのように手放しで絶賛しています。
チャンスを逃がさないために4年間の努力
箱根駅伝は、極端な言い方をすれば、誰しも平等にあると思う。だからこそ、その時をどう生きるかということが、そのチャンスを手にするためには重要で、そのチャンスを逃さないために、4年間は努力を重ねた
前田監督が3年生の時、出雲駅伝、全日本大学駅伝と2つの駅伝で優勝し、大学駅伝三冠に王手をかけながらも、箱根駅伝では9区で逆転負けをしました。このとき箱根駅伝を勝つことの難しさを味わっています。
4年生でチームキャプテンになってからは、
箱根で勝つためにはどうするべきか、ということばかりを考えるようになった。その1年間に自分の人生を集約しようと思ったほどだ。それほど箱根駅伝に人生をかけていた。自分だけの力では成しえなかったことではあるが、チームで優勝を勝ち取ることができた
箱根駅伝で優勝することにすべてのベクトルを向けたからこそ駒澤大学は箱根駅伝ではじめて優勝を勝ち取ることができたのです。
前田監督の『箱根駅伝は誰にもチャンスがある。そのチャンスを逃さないために』どうするか。
とっても含蓄に富んだ言葉です。
どこに行くかより誰と行くか!
2019~2020年、出雲駅伝で優勝し、全日本大学駅伝では7位(2年連続シード権獲得)、そして箱根駅伝 往路の2位 総合で3位という、かがやかしい成果を収めた國學院大學陸上競技部。
前田監督は陸上競技部4年生 15人に卒業旅行をプレゼントしました。
旅行先はキャプテンの土方選手が決めた熱海。
そこで4年生15人の全体写真をインスタグラムに上げたときの言葉が
どこに行くかより誰と行くか!4年間みんなありがとう!
前田監督には、心を打つ言葉だったと思います。
そして、旅行最後に前田監督に送ってきた全体写真には『前田さん、ありがとうございました』の言葉が添えられていました。
箱根駅伝に掲げた目標「往路優勝 総合3位」。往路では惜しくも2位でしたが総合で3位。完全達成とはなりませんでしたが、それまでの國學院大學の成績を大きく上回る結果です。
土方選手のみんなに感謝する気持ち。土方選手だけでなく國學院大學陸上競技部の全員が感謝の気持ちを持っていることに心を打たれます。
現状維持は退化と同義
『指導者として、選手を強くしていくためには、どんなツールを用いればいいのか、ということについては常に頭の中で考えを巡らせている』
『指導者自身がアップデートしないままだと、いつしか頭打ちになってしまうのでないだろうか。もちろん同じことを徹底的に繰り返すことも大事だが、そればかりでは、いつの間にか後に追い抜かれ、取り残されることになってしまう』
近年大躍進を続けている國學院大學の陸上競技部において、前田康弘監督はこのように延べ、そして高締めくくっています。
現状維持は退化と同義
近年の箱根駅伝は情報の発達や技術の高度化、そしてモチベーションの高揚などすさまじい進化が見られます。
レベルアップさせるには何がいいか、常にアンテナを張っていて、他の競技はもとより、他の指導者、特に実業団の指導者などにも単刀直入に質問していい方法があるとその場でメモさせてもらったりしています。
常にレベルアップを目指すチームだからこそ、指導者が貪欲になることの大事さがうかがえます。
まとめ
箱根駅伝ではいろいろな言葉が生まれました。
駒澤大学に対する「平成の常勝軍団」、青山学院、駒澤大学、東洋大学、東海大学の主力4チームに対する「箱根駅伝4強」「東海大黄金世代」など。
現在は、それら4強を脅かしかねない大学チームがひしめいてきました。
また、山の神ほどではないにしても、5区では法政大学や國學院大學などは、山登りのスペシャリストとして中継でも大きく取り上げられ、実際に順位を大きく上げ、往路優勝は最後の最後まで見えないようになってきました。まさに「箱根駅伝 群雄割拠」です。
そして、國學院大學の前田康弘監督は駒澤大学 大八木監督の愛弟子で同校が最初に箱根で優勝したチームのキャプテンでした。
その愛弟子による國學院大學が駒澤大学を抜き去る「箱根駅伝 下克上」はもう始まっているかもしれません。
毎年の箱根駅伝は、スタートから往路、復路、総合順位と目が離せず、楽しみだらけですね。