ウォーレン・バフェット(Warren Edward Buffett-1930年8月30日-)。投資に関わる人で、バフェットの名を耳にしたことがないという人はいないでしょう。
それほどにバフェットは投資の世界で大成功を収めた人物です。
アメリカ・ネブラスカ州オマハ出身で、お金持ちになりたい。できれば富豪になってみたい。お金持ちになれば自由な人生を生きられるとの思いから、わずか6歳で子供ながらも、小さなビジネスを始め、大学に進む頃には確定申告をするほどのマネーを動かしていました。
バフェットの投資哲学は、株を買うのではなく「事業を買う」「10年、20年、50年売らない」という長期投資です。これは、彼が投資に目覚めた子供の頃、図書館にある投資関係の本を1冊残らず、しかも、何度も繰り返し読む中で、グレアムの著書『賢明なる投資家』に出会ったことでこの投資法を生涯貫き通しました。
バフェットは、グレアムがコロンビア大学の大学院で教鞭を執っていることを知ると、すでに1か月も前に締め切りを過ぎていたにもかかわらず、熱心な手紙を送って面接抜きで入学を認めてもらいました。
ウォーレン・バフェットがグレアムから学び、彼の手法を生涯にわたって貫き、そこにバフェット流の応用を加えた投資術から生まれた数々の名言の中から、8つ言葉をご紹介します。
時代遅れになるような原則は、原則ではない
たとえば、ニュートンがりんごが木から落ちることで発見した「万有引力」や、今ではGPSなどにはなくてはならないアインシュタインの「相対性理論」などは、過去の遺産で現代では使えない原理原則だ!なんてことはありませんよね。
しかし、株式投資の世界ではこういうことがときどき起こります。
1960年代。急成長を遂げている未公開株に大量投資して、短期間で利益を得る投資ファンドのフレッド・カーが注目されていました。短期で利益を確定させると、次の急成長の未公開株を購入して利益を上げるという手法です。
フレッド・カーの投資法が「全米一のファンド・マネージャー」「新時代のヒーロー」ともてはやされ、投資の世界ではこの手法が正道のように大きく取り扱われました。
このころ、バフェットは一貫した投資法を続け、自分のやり方を変えることはしませんでした。
新しいやり方が大きな利益を生み出すことができ、
同時に私のこれまでのやり方の効力が失せ、
大きな損失を出す可能性があるとしても、
私はこれまでのやり方を変えるつもりはない
バフェットは慌てることもなく、平然と自分の投資法を堅持していました。
そして、バフェットの投資法が正しかったことが、証明されるときがすぐに来ました。
フレッド・カーや彼のやり方に追随し、90年代後半のITバブル時代の大きな恩恵を受けた多くの投資家達の栄華の時期は短命に終わり、無残にも廃業に追い込まれていきました。
ウォーレン・バフェットは、この流れを眺めながらこう言っています。
いつの時代も基本原則を堅持することが大事であって
時代遅れになるような原則は、原則じゃありません
50年たっても欲しいとみんなが思うものをつくっているか、これが投資判断の基準だ
ウォーレン・バフェットの投資方針は長期投資です。
彼はこのように定義しています。
偉大な企業とは、今後25年から30年
偉大であり続ける企業のことです
素晴らしい収益を短期間あげる企業は数多くありますが、かといってその企業が10年先まで輝き続けているかというとその可能性は非常に低いことでしょう。
バフェットは、ITバブル期に短期利ざや稼ぎの手法が投資界から「時代の寵児」ともてはやされる中で、アイスキャンディの企業「デイリークイーン」を買収しました。
世間が投資先はハイテク、IT業界しかない!と浮かれているときに、超アナログな企業を買ったのです。
バフェットは長期投資の判断基準として、こうも言っています。
信頼できるもの、そして10年、20年、30年たっても
欲しいと みんなが思うものをつくっているかどうか
バフェットにとって、企業を見るポイントは、
「株価より資産価値、資産価値より成長価値」
なのです。
どんな愚か者にも経営を任せられるすぐれた会社の株を買え。いつかは愚かな経営者が現れるからだ
企業の三大資源は「人・モノ・金」と言われます。
(現代では、この三大資源に2つ足して五大資源「人・モノ・金・情報・時間」とも言われますが・・・)
この「人・モノ・金」のうち、バフェットは人ではなく、モノ(事業)に投資するべきだと言います。
株を買うなら、どんな愚か者にも経営を任せられる
すぐれた会社の株を買いたいと思うでしょう。
なぜならいつかは愚かな経営者が現れるからです
愚かな経営者では企業を潰してしまいます。また、事業に優位性がない企業では、どんなに優秀な経営者がいても成功をつかむのは簡単ではありません。
バフェットが愛してやまなかったコカ・コーラ社がいい例です。
コカ・コーラ社は世界中から認知されるほどの成長を続け、収益力も高く、業界トップクラスに位置して、飲料水以外に、例えばまったく未知の業種、ファストフードに進出してもトップクラスの経営を続けるだろうと評価されていました。
しかし、ロベルト・ゴイズエタが急死した後、現実に愚かな経営者が現れたのです。
責任者に就いた新CEOダグ・アイベスターは、ヨーロッパで報じられた健康被害に対して適切な対応ができず、続いて就任したダグ・ダフトも適任とは言えませんでした。その次に就任したネビル・イズデルの代でようやくコカ・コーラ社はV字回復を果たすのです。
ここで注目したいのは、コカ・コーラ社が優秀なモノ(事業)を持っていたと言うことです。そうでなければどんなに優秀な人物が経営トップに付いていたとしても、回復できなかったでしょう。
「たやすいことだ」と言う相手の話は9割がたお断りする
ウォーレン・バフェットは投資決定の際には数字の報告を受けることはあっても、経営に直接関与することはありませんでした。
それほどに、経営陣を信頼してことになります。
では、どうすれば経営陣=人を信頼できるのか。
バフェットはこのように答えています。
私は大変幸運に恵まれています。
ですが、それは大勢の人を振るい落とした結果なのです
大勢の人をふるい落として、その結果わずかな人たちに、経営の全幅を任せる。バフェットの経営術のすごさが表れていますね。
ふるい落としの着眼点は、しばらく付き合いながら
・相手がどんな発言をするか
・何を重要と考えているのか
・どんなことに笑うのか
こういった何気ないような会話、振る舞いの中に探すのです。
とくに危険人物と警戒する人は
もし相手が『たやすいことです』と言ったら、
それはたいていたやすいことではありません。
私たちはその瞬間に警戒します。
そういう話は9割がたお断りします
バフェットほどの資産家ですから、彼に耳に心地よい投資話や出資依頼は引きも切らさずだったでしょう。
そんな中に、あたかもすぐ儲かるというような事案を持ってくる人もかなり多かったのでしょう。
私は76歳の今も、19歳の時に本で読んだ考え方を実践している
バフェットは6際からビジネスをはじめました。そして、金持ちになりたい。裕福になりたい。と、図書館に通う詰め、投資関係の書籍を読み尽くします。
その中で、グレアムの著書『賢明なる投資家』に出会います。
『まるで神を見つけたみたいだった』
バフェットは、投資の成功に必要なのは、高い知能指数でも、複雑な数式を駆使することでもなく、原則に忠実であり続けることと断言します。そして、自分が定めた基本原則から絶対に外れないスタンスを貫き通します。
そのスタンスを表現した言葉です。
私は76歳になった今も、19歳の時に
本で学んだ考え方を実践しています
ノウハウを見聞して、分かったつもりになってそのままにする人は多いでしょう。
金のなる話しを読み、知ったのに、なぜそれを実行しないのか?
実行したとしてもなぜ継続できないのか。
バフェットには理解できないことなのでしょう。
陸の上を歩くとはどういうことか、魚に説明できるか
この言葉には、「経験」することが大事だとの教えが込められています。
例えば、水泳の教本を何冊も、繰り返し読見返したとしても、泳げないのと一緒です。
水の冷たさ、水の抵抗など、実際に体験して始めて知ることがあります。
バフェットは経営に関しては経験を重視します。
たとえば、バフェットの会社バークシャー・ハザウェイには定年制度がありません。熱意に満ちたやる気にあふれる経営者を、一定の年齢に達したからという理由だけで退職させるのは、企業にとって損失でありもっとも愚かしい方法だと考えているのです。
バフェットはこのように言います。
陸の上を歩くとはどういうことか、魚に説明できるだろうか。
たぶん何千年説明しても説明しきれないだろう。
でも1日歩いてみれば、たちまちすべてがわかるはずだ。
企業経営も同じこと。たとえ1日だけでも、
経営者になるということはとても貴重な経験になる。
好きなことをとびきり上手にやることだ。お金はその副産物にすぎない
ウォーレン・バフェットは仕事についてこのように語っています。
1941年に4割を打ったテッド・ウィリアムズは、
2割そこそこしか打てなければ、
最高の給料をもらってもふさぎ込むが、
4割打てれば、最低の給料でも大喜びするだろう
続けてこのように言葉を繋いでいます。
大事なのは、
自分が好きなことをとびき上手にやることです。
お金はその副産物にすぎません
自分が好きなこと、やりたいことは、誰からも賞賛されるぐらいに、精一杯、力の限りに尽くしなさいと言っているのです。
ネブラスカ大学に招かれて、親友であるビル・ゲイツと公開対話の場でバフェットは、学生達にこのように話しかけました。
『何でもいいから夢中になれるものを見つけてください』
そして自分のことも続けました。
『自分は投資という大好きな仕事を見つけられて幸運だった』
他社からの評価や賞賛を目当てに今目の前にあることに集中するのではなく、自分がいちばんやりたいと思っていることに全力で集中し、だれも達し得ない実績を揚げることが、バフェットの生き方です。
正確に間違うより、大まかに正しい方向へ進むべきだ
2006年、アメリカで100社以上もの企業が不正にストックオプションの付与日を、不当操作していたということで大問題になったことがありました。
これは、自分たちが手にする利益をかさ上げする身勝手な恥ずべき事件でしたが、有名な大企業が名を連ねていた背景には、他の会社もやっているんだから・・・が理由でした。
昔、北野たけしさんがツービートの漫才ネタ「赤信号 みんなで渡れば 怖くない」が流行りましたが、まさにこれと同じことをしていたんです。
バフェットがいう「正確に間違う」とは、「明らかにルールから逸脱していること」という意味です。
バフェットは傘下の企業にこのように釘を刺しました。
他社が問題含みの行動をしているからといって、
わが社が問題含みの行動をしても大丈夫と思ってはいけない。
ビジネスの世界で最も危険な言葉は、五つの単語で表現できる。
『ほかの誰もがやっている(Everybodyelseisdoingit)』だ
さらに、ソロモン・ブラザーズの国債不正入札をふまえて、不透明なことや違反すれすれのグレイな部分についても厳しくしました。
『ライン上はダメなのはもちろん、ラインに近くても違反とみなす』
他社もやってるから!とか、NGの線引きがはっきりしていない!というのは、バフェット的にはゆるせず、言い訳にならない、ということなのです。
まとめ
6歳からビジネスに目覚め、10代後半には投資の才覚を発揮していたウォーレン・バフェットは、投資や金融面での名言、名ゼリフが多いように見られがちですが、彼の言葉には、そういった投資方針、投資技術よりも、人間としてのあるべき姿を説いた言葉多いことに気づきます。
経営成績よりも、経営者の人柄に注目したり、流行りの投資法で多くの利益を上げている投資ファンドにも、「我、関知せず」のごとく、10代に身につけた投資法をかたくなに堅持していたり・・・。
出資者や投資家目線での投資法ではなく、その企業の消費者がその事業生産物を必要としているか、経営センスに劣っている企業トップが就任しても潰れないほどの事業をやっているか・・・などです。
これらの言葉は、ビジネス、人生に共通する成功法と言っても過言ではないでしょう。